柳原良平主義 ~RyoheIZM~28
アンクルトリスと、ちびまる子ちゃん
2.5頭身の不思議
アンクルトリス(アンクル船長)は2.5頭身。そして、ちびまる子ちゃんも2.5頭身だ。これに気づいたときは驚いた。気付いた自分を褒めてやりたい!
ちびまる子ちゃんの著者、さくらももこは、ちびまる子ちゃんのキャラクターを完成させるにあたって柳原良平、またはアンクルトリスを意識などしていなかっただろう。両者ともすでに故人となっているので知ることはできないが。だがこのふたりの秀逸なキャラクターには、2.5頭身であること以外に、共通点もあり、また相違点もある。
腕と脚
共通点は腕と脚の太さだ。両方とも細い。この頭の重さは支え切れないと思うほど細い。なのに片や小学生らしく見え、片や中年らしく見える。なぜだろう?
ちびまる子ちゃんの方は理解しやすい。子供はみな頭でっかちだからだ。でもアンクルトリスは頭でっかちなのに洗練された大人に見える。キャバクラに行くと、どう考えてもモテるタイプだ。ウィスキーのCMから生まれただけあって、酒の飲み方がキレイそうだからだが、それ以外にもモテそうに思える理由がある。それは何かと考えた。きっとオシャレだからだと思う。
なぜオシャレに見えるかというと、着てる服の仕立てが良さそうだからだ。ではなぜ仕立てが良さそうに見えるのか。とまあ、このようにしてWHYを繰り返すことは、ビジネスやマーケティングを学ぶ際の、基本的なノウハウのひとつ。しかしビジネスと無縁の、こういうときにも役に立つ。
直線と曲線の違い
そのようにしてWHYを重ねて最終的にたどり着いた答え。それは、”線が直線的だから”だということだった。そして、ここがちびまる子ちゃんと最も異なるところだという結論に達した(個人的に)。
直線的か曲線的かというのは、遠目に見るとかなりの違いがある。人間のプロポーションにおいての違いに特化して考えると、つまりこういうことだ。
腕や脚(の骨格)は、真っ直ぐか曲がっているかによって最も違いが現れる。東洋人と欧米人の典型的プロポーションを比べれば一目瞭然だ。
女性はよく「二の腕や足を細くしたい」などと言ってヨガや食事制限などをするが、そんなわけでそうした行動は的外れに思えてならないのは、そんな理由による(あくまで個人的に、だが)。だからといって女性の努力や向上心をバカにしているわけではない。自分の骨格を考慮することが大事だと思うだけだ。
顔のパーツに注目
つまりアンクルトリスの骨格は、欧米人のそれと同じように見えるのだ。間接(肘と膝)がはっきり描かれているところも、そしてスキンヘッドであることも、大人感(?)を助長している要素のひとつ。そして顔の作りにこそ最大の違いが見て取れる。
ちびまる子ちゃんの目が、素朴な印象を強調するためなのか、シンプルな黒点なのに対して、アンクルトリスは白目の中に黒目が描かれている。表情を豊かにするために白丸の中に黒目を入れたらしいが、表情が豊かという以上に、ギラっとした生気が漂っている。
そして最も印象的なのが、大きく直線的な鼻。ここがアンクルトリスの最大の特徴で、鼻筋が通っているこの大きな鼻こそが大人感を際立たせているように感じてならない。対してちびまる子ちゃんには鼻そのものがない。対照的だ。
複層的な魅力
アンクルトリスという普遍的なキャラクターを見て「可愛い」と評する人々が少なからずいることは承知しており、それはそれで納得できる。しかしよく見ると、それだけではない大人っぽさも醸し出されていて、一見可愛いけれど、よく見るとオシャレな紳士というような、複層的な魅力がアンクルトリスには備わっている。魅力が単一でないことこそ、キャラクターとしての寿命の長さを物語っていると感じてならないのだ。
アンクルトリスの特徴、というより魅力が、どこにあるのか? そして他と何が違うのかを考えていた。そんなおり、同じ2.5頭身のプロポーションを持つちびまる子ちゃんを発見し、比較してみたら、スッと腹に落ちた次第。(以下、次号)
柳原良平(やなぎはら・りょうへい)
アンクル編集子
※編注
「船キチ」という表現は「尋常ではない船マニア」といったニュアンスを表しています。柳原良平が自著の中で、主に自身に対して頻繁に使用している表現ですが、そこに差別や侮蔑の意図はまったく感じられません。従って本コラムでは、他の言葉に置き換えず、あえて「船キチ」という単語をそのまま使用しています。
柳原良平原画・複製画
柳原良平アクリルフォト
柳原良平主義 ~RyoheIZM~
アンクルトリス(アンクル船長)は2.5頭身。そして、ちびまる子ちゃんも2.5頭身だ。これに気づいたときは驚いた。気付いた自分を褒めてやりたい!
ちびまる子ちゃんの著者、さくらももこは、ちびまる子ちゃんのキャラクターを完成させるにあたって柳原良平、またはアンクルトリスを意識などしていなかっただろう。両者ともすでに故人となっているので知ることはできないが。
山口瞳といえば、寿屋(現サントリーホールディングス)時代の柳原良平の同僚であり、「トリスを飲んでHawaiiへ行こう!」の名コピーを考えた人物として、本稿の読者ならすでにご存知のことと思う。
レイを首にかけたアンクルトリスとハワイ各島のイラストによる地図、そこにこのコピーが配された新聞の広告やテレビCMは大きな反響を呼び、この年(1961年)の流行語となるほど広まった。
アーティストはみな独自の個性を持っているが、その個性を確立するには、それぞれきっかけがあるようだ。たとえばゴッホの独特のタッチや印象的な黄色の使い方は、彼がパリからアルルに引っ越して「ひまわり」を描いたことがきっかけだと言われており、有名な作品はその時期以降に描かれたものが多い。
アルル以前のパリでは、モネやルノワールなどの印象派の画家たちをはじめ、スーラの点描や日本の浮世絵などに影響を受け、さまざまな技法を用いた作品を残したが、ひまわり以降の作品ほど評価は高くない。